「直して住む」を、当たり前の豊かさに。
今日、ある支援者の方のご自宅を訪問する機会がありました。案内されたのは、かつて牛小屋だったという建物をリフォームした空間。そこは事務所兼応接間として生まれ変わり、木の温もりが漂う、とても居心地の良い場所でした。
牛小屋が生まれ変わった「集う空間」
「ようこそ」と迎え入れてくれるその空間は、単なる建物以上に、人が集い、語らうことを待ち望んでいるかのような温かさを持っています。私の家は手狭で、残念ながらこのような余裕のある空間を持つことはできません。正直なところ、憧れます。
都市とは異なる、中山間地ならではの空き家問題
こちらの集落にあるかつての市長さんのお宅も、その隣にある私の同級生の実家も、今は住む人がいません。ときどき人が来て、風を通すような空き家は問題ないのですが、そうした管理が行き届かず、人の気配がまったく消えてしまった空き家は、タヌキやハクビシンといった獣たちの格好の隠れ家になってしまうそうです。そこで繁殖した動物たちが周囲の田畑を荒らし、地域に深刻な被害をもたらす。これはアンケートの数字だけでは見えてこない、現場の切実な痛みでした。
いっそ更地にしてしまえばいいのに、そう思うのは簡単ですが、現実はそう単純ではありません。話を聞けば、解体には500万円もの費用がかかることもあるそうです。さらに、そこには日本の税制が生んだ「空き家を解体できないジレンマ」も大きく立ちはだかっていました。
更地にすると増税?!
私は知らなかったのですが、空き家を解体し、更地にすると固定資産税が高くなるんだそうです。 これについて調べたところ、住宅が建っていれば「住宅用地の特例」により、土地にかかる固定資産税が最大で6分の1にまで軽減されるとのこと。逆に言えば、家を解体して更地にした途端、この特例が外れ、税負担が急増してしまうのです。
「どんなボロ屋でも、残しておいたほうが税金は安く済む」
支援者の方が教えてくれたこのことは、悲しいかな、経済合理性の観点からは正解だったのです。 (※管理不全空き家に対する特例解除の動きもありますが、多くの所有者が費用と税負担の板挟みになっています。)
英国に学ぶ「資産」としての家
一方で、市場に目を向けると、1000万円以下で建てられる低コストな新築一戸建てが若い世代に人気です。古い建物をリフォームしようとすると、かえって新築よりも高くついてしまうことさえあります。ここにも、制度と需要の大きな歪みがあります。
英国には「プロパティ・ラダー(資産の梯子)」という言葉があり、古くなった家をリフォームしながら住み継ぎ、資産価値を高めていく文化が根付いています。ハウスメーカーによる「スクラップ・アンド・ビルド」方式の効率的な建築がもてはやされ、職人の大工さんによる「直して使う」という貴重な技術が失われつつある日本。それとは対極的に、英国では若い大工さんや設備屋さんが活躍し、また夜の飲み屋でも存在感を示していることが在英時代の印象として強く残っています。
さらに言えば、空き家がある場所には、既に水道や電気などのインフラが整っています。それなのに、わざわざ田んぼを潰して新しい住宅地を作り、そこにまた新しいインフラを敷設する。人口が減っていく中でこれを行えば、社会全体の維持費はかさむ一方です。
かつての牛小屋が、あんなにも素敵な交流の場に生まれ変わる。その可能性を目の当たりにし、お話を聞いた今日だからこそ、今の制度の硬直さがもどかしくてなりません。
新築偏重の社会から、あるものを活かす社会へ。今回の支援者の方のような素晴らしいリフォームが、特別なことではなく、当たり前の選択肢として選ばれるような。そんな、うまい制度を設計できないか、強く考えさせられる訪問となりました。
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