水道の広域化を考える
水道の使用量は、検針員さんが一軒一軒歩いてメーターを見て回る。そういうものだと、皆さんお思いかと思います。しかし、電気はどうでしょう。昔は検針員さんが歩いていましたが、今ではまったく見なくなりましたよね。遠隔で検針を行えるスマートメーターが普及した効果です。
電気はすでに「100%」、水道は「1%未満」
中部電力管内では、2023年3月末までにスマート化100%を達成しました。30分ごとの電気使用量が自動で送られ、効率的な発電計画と、人海戦術の検針廃止を実現しています。一方で、水道はどうでしょうか。全国の普及率は1%にも満たないと言われています。電気と比べ、水道のIT化は周回遅れどころか、まだスタートラインにも立てていないのが現実なのです。
水道は土の中にあり、電源も取れないからスマート化は難しいと思われるかもしれません、
技術の壁はもうない
私がイギリスで暮らしていた頃、すでに欧州では水道のスマート化が進んでいました。さらに近年の技術革新は劇的です。LPWA(省電力・広域通信)という無線技術の進歩により、地中のメーターも内蔵バッテリーだけで長期間(メーターの有効期間である8年など)稼働させることが可能になりました。技術的にはもう、水道も電気と同じように自動検針ができる時代になっているのです。
人件費のかからない検針。電気は既に実現しています。
なぜ普及しないのか?
技術があるなら、なぜ導入しないのか。答えは単純に、コストです。地中にあるメーターを交換するには、電気のメーター交換より多大な時間と労力が必要です。人口が減り、水道料金収入が先細りしていく中で、単独の自治体予算だけで市内全域を最新鋭に入れ替えるのは財政的に困難。「便利にするから水道代を上げます」では、市民の方も納得できないでしょう。
「広域化」というチャンス、期限は令和16年
「上田長野地域水道事業広域化基本計画」から「案」の文字が取れ、広域化がいよいよ進むことになります。国は広域化を強力に進めるため、「いま決断するなら、設備投資にかかる借金を国が実質半分近く肩代わりしますよ(交付税措置)」という、強力な財政支援を用意していますが、この支援には令和16年度までという期限があります。私は、この「国の財布」が使えるタイミングを逃さず、スマートメーターへの更新という未来への投資を実現すべきだと考えています。
「構想」から「設計」する段階での監視が大事
商品開発に置き換えると、今は市場調査を終え、新商品の構想が練り上がった状況です。この商品に使う機器の選定、仕様の洗い出し、ここがいちばん大事なところで、技術者としての醍醐味の部分です。
計画書にある「DXの推進」という言葉一つとっても、技術者の視点で見ればリスクがあります。「ベンダーロックイン」ということばをご存知でしょうか。システムの核心部分に特定のメーカー独自の規格を採用してしまい、将来の修理やシステム改修費をそのメーカーに言い値で請求され続ける、いわば「囲い込み」のような状況のことをいいます。メーカーの技術者という立場であれば、あえて囲い込みで利益追求する発想になりますが、市民の立場では囲い込みに遭わないよう監視しなくてはなりません。
美辞麗句の中に、ベンダーの思惑を読んでしまう技術者の性(笑)
コスト削減やスピードアップを急ぐあまり、災害時に本当に必要な水圧や水量を確保できる設計になっているか、そうした点での監視も必要です。
「AIで効率化」といった耳触りの良い言葉の裏で、市民生活に不利益な仕様が紛れ込まないか。これから詳細なお金の使い道が決まっていく今だからこそ、私は技術者の視点でその中身を厳しくチェックしていきたいと考えています。
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