消費税17.5%の国で暮らした話

それでも、税金高いなぁと感じることはありませんでした。
塩入友広 2026.01.08
誰でも

英国で感じた「暮らしの豊かさ」と税のメリハリ

前回に引き続き、私がイギリスで暮らしたときの話です。今回はもう少し、私の個人的な生活実感、特に「日々の暮らしとお金」についてお話ししたいと思います。

私がイギリスのバーミンガム近郊で生活していたのは2008年から2009年にかけての1年間ほどです。当時の暮らしで一番衝撃を受けたのが、現地の消費税(VAT)の仕組みでした。

2008年7月 初めての買い出し

2008年7月 初めての買い出し

17.5%の衝撃、でも生活は苦しくない?

イギリスやヨーロッパといえば、消費税が高いイメージがありますよね。現在、イギリスの標準税率は20%ですが、私が暮らしていた当時も標準税率は17.5%(経済対策で一時的に15%)でした。当時の日本の消費税はまだ5%。レシートを見るたびに「日本の3倍以上か……」と、財布からごっそりお金が減っていくような感覚に襲われたのを覚えています。

ところが、実際に住んで生活に馴染んでくると、不思議とお金に対するストレスが少ないのです。なぜなら、イギリスの税制には驚くほどハッキリとした思想があるからです。

「生きるために必要なもの」は課税されない

端的に言うと、生きていくために必要なものには課税されません。スーパーで買う野菜や肉などの食材は税率0%。知的な生活に不可欠な本や新聞も0%。通勤、通学に必要な公共交通機関の運賃も非課税です。

自炊をして、本を読んで勉強して、週末には電車で小旅行……そんな生活をしている限り、高い税金をほとんど払わずに済むのです。これは日本の軽減税率のような数パーセントの差ではありません。「課税(標準税率)」か、「非課税(ゼロ)」か。この差は、日々の暮らしへダイレクトに響きます。

さらに驚いたのが、「子供服」も非課税であること。すぐに体が大きくなり、買い替えが必要になる子供の服は贅沢品ではなく必需品という扱いなのです。私自身には子育ての経験はありませんが、社会全体で次世代の成長を支えるという、先進国としての強い意志を感じたことを覚えています。

寒い冬を支える、光熱費は「5%」

イギリスの冬は長く、寒く、そして暗いです。そこで徹底されているのが、電気やガスといった家庭用エネルギーへの配慮です。ここには軽減税率として、5%の税率が設定されています。どうでしょう。「生きるための配慮」を感じませんか?

ビスケットのチョコは「贅沢」な課税対象?

課税の線引きもユニークです。例えばお菓子。素朴なビスケットや板チョコは食料品として非課税ですが、これがチョコレートでコーティングされたビスケットになると贅沢品とみなされ、標準税率がガツンと課税されます。

日本ではテイクアウト(税率8%)とイートイン(税率10%)の差が話題になりますが、イギリスではさらに強烈なメリハリがあります。店内で食べると「外食サービス」なので標準税率。冷たいサンドイッチを持ち帰るなら食料品として非課税ですが、温かく調理されたハンバーガーであれば、持ち帰りであっても「ケータリング」として標準税率になるのです。

イギリスの代表的な外食「サンデーロースト」

イギリスの代表的な外食「サンデーロースト」

税のメリハリが、暮らしの豊かさを作る

生きるための食料は0%、贅沢を楽しむ外食や加工品はしっかり課税。この制度が何をもたらすかというと、自然と家での食事の時間が増えることになります。日常はスーパーで非課税の食材を買い、家で料理を作って食べる。これが結果として、家族の団らんを生み、健康的な食生活にもつながります。

お金をたくさん持っていなくても、知恵と工夫で、十分に豊かで文化的な暮らしができる。そんなことを肌で感じたイギリス生活でした。生きるために大切なことは何か、という視点を持った税のあり方。イギリスでの日々を思い出すたび、そんなことを考えさせられるのです。

税制のような大きな話は国会議員の仕事かもしれません。でも、海外にはこういう仕組みがあって、そのおかげでこんなふうに暮らせるんですよ。日本でも見習うべき点があるのでは?という提言なら、私でもできると思います。

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